て行ける当もなかった。豹一は毎朝新聞がはいると、飛びついて就職案内欄を見た。質札を売りに来る客と応待する合間を盗んで、履歴書を書いた。楷書の字が拙かったので、一通書くのに十枚も反古が出来た。十通ばかり書いたが、面会の通知は一通も来なかった。履歴書を返送して来る方は良い方で、たいていは何の返事もなかった。十八歳までの半生が踏みにじられたような情けない気持になった。自尊心を傷つけられたと腹を立てるよりも、自分は就職など出来る人間ではないのだと自信のない気持でしょんぼり気が滅入った。店の間のテーブルに肘をついて、野瀬商会と白ぬきの文字のはいった暖簾を見ながら、欠伸をかみ殺して客を待っていると、そうして高利貸の手代みたいになっていることがいかにも自分に似つかわしいように思われる。それがたまらなくいやだった。返送されて来た履歴書を書き直す元気もなく、手垢のついたまま別のところへ送る時は、さすがに浅ましい気持になった。
 ある日、製薬会社が広告文案係を求めているのを見て、広告文案など作れそうにもなかったが、とにかく三つばかり文案を作って履歴書と一緒に送ったところ、一週間ほど経って面会の通知が来た。
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