「ヴィクターで待っててくれ」野崎はなにか責任の重さを痛感したような顔で、夜の町を金策に奔走するのだった。
ある日、野崎は突然行方不明になった。その前の晩野崎と赤井と一緒に宮川町で泊ったのだが、金無しで泊ったので、野崎は赤井を人質にして金策に出掛けた。が、何時間経っても赤井のところへ帰って来なかった。そこの家の女中が学校へ豹一を訪ねて来て、金をもって帰り、それでやっと赤井は人質から解放されたが、野崎はそれから三日も下宿へ帰って来なかった。二人で探して見たが、見当がつかなかった。三日目の朝、学校へ行くと、野崎がしょんぼり教室に坐っていた。授業が始まる前だったので、直ぐ呼び出して、近衛通の喫茶店へはいり、事情を訊いて見ると、こうだった。
赤井を人質に残して、出たものの、野崎には金策の当がなかった。三軒ある親戚も一方で借りた金を一方へ返し、そこでまた借りた金で一方へ返ししていたから、随分借金が嵩んでいた。五円返したその場で十円借りるというつもりのヤリ口も、その五円が手にはいらぬ限り不可能だった。下宿で借りるということも考えられたが、それも下宿代が二人分滞っている上に、まだいくらか現金を借り
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