ていたから、到底実行出来そうもなかった。おまけに昨夜外泊した顔をぬけぬけと出して借金も出来なかった。豹一なら持っているかも知れないと思ったが、行く前の顔はともかく、宮川町からの帰りの顔をどうして会わされようか。眼が充血し、黒い皮膚がいくらか蒼ざめて、ねっとりと脂の浮いている顔を、豹一の美しい顔の前へ出すのは恥じられた。質草もなかった。大阪まで京阪で帰って、家で貰って直ぐ引きかえして来ようかと思ったが、材木屋をしている父がこの頃糖尿病で臥込んでいることを想い出すと帰れなかった。ひょっとして父の痩せた顔を見て、いきなり日頃の行状を告白したくなったり、また母親から貰って便所で泣いたりしていると帰りが遅くなるやろと思った。当もなく京極を歩いて、誰か知った顔に会えへんやろかと眼をきょろつかせた。この前一銭の金を借りるために、京極を空しく三往復したことを想い出したりした。その時十四銭もっていたのだが、腹は空っているし、珈琲ものみたかった。結局「スター」の喫茶店で十五銭のホットケーキを食べれば、珈琲がついているから、一挙両得だと思ったのであるが、それには一銭足りない、誰か知った奴に会わないかと歩きま
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