てこいでっせ」
 男は狼狽して言った。
 汽車が動きだした。
「竹の皮の黒焼きでっせ」
 男は叫んだ。
 汽車はだんだんにプラットホームを離れて行った。
「竹の皮の黒焼きでっせ」
 男の声は莫迦莫迦しいほど、大きかった。
 女は袂の端を掴み、新派の女優めいた恰好で、ハンカチを振った。似合いの夫婦に見えた。



底本:「定本織田作之助全集 第二巻」文泉堂出版
   1976(昭和51)年4月25日初版発行
   1995(平成7)年3月20日第3版
初出:「大阪文学」
   1942(昭和17)年1月号
入力:奥平 敬
校正:小林繁雄
2008年11月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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