受けたる者二百円、普通百円の割にて報酬を与える旨、通告した。……
これだけ、引けば、良いだろう。これだけでも十分、八百長さ加減はわかる筈だ。詳しく知りたければ「真相をあばく」の百六十四頁から百七十五頁までを見てもらおう。十一頁にわたり、支店や直営店がいかに巧妙に全快写真を探しあつめたかを、御丁寧に統計まであげて、素っ破ぬいている。
なお、同書百七十六頁から百七十九頁までには、全快写真の主が日ならずして、死んだとか、とくに死んでいる筈の病人が、どういう手落ちでか、百ヵ日当日の新聞広告の写真の上に生きかえって、おかげで全快してこんな嬉しいことはない云々と喋《しゃべ》っているとか、些かユーモア味のある素っ破抜きをしてあるが、まさか、そんなことはなかったろう。よしんば、あったにしたところで、人の命というものは、明日をも知れぬもの、どうにでも弁解はつく、そう執拗《しつよう》に追究するほどのことはなかろう。
しかし、とにかくこの広告は随分嫌われものだ。それだけにまた、宣伝という点では、これだけ効果的なものは、今もってちょっとほかに見当らないくらいだった。売れた。情けないほど売れたよ。
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