勧善懲悪
織田作之助
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)縮《ちぢみ》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)代々|鎗《やり》一筋の家柄で
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
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一
ざまあ見ろ。
可哀相に到頭落ちぶれてしまったね。報いが来たんだよ。良い気味だ。
この寒空に縮《ちぢみ》の単衣《ひとえ》をそれも念入りに二枚も着込んで、……二円貸してくれ。見れば、お前じゃないか。……声まで顫《ふる》えて、なるほど一枚ではさぞ寒かろうと、おれも月並みに同情したが、しかし、同じ顫えるなら、単衣の二枚重ねなどという余り聴いたことのないおかしげな真似は、よしたらどうだ。……それに、二円貸せとは、あれは一体なんだ? 同じことなら、二千円貸せ……と、大きく出るんだね。だいいち、その方がお前らしいよ。
もともとヤマコで売っていたお前の、そんな惨めな姿を見ては、いかな此のおれだって、涙のひとつも……い
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