か」
 他吉は嬉しそうに言って、
「――種さん、人間はお前、どないでもして食べて行けるもんやな。人間はへこたれたらあかんぜ」
 これは半分君枝にもきかせ、そして、天びんを左肩へ置きかえると、
「えーうどんの玉ア……」
 やがて、声も姿もちいさくなった。
 風に吹かれて佇み、見送っていると、向うから東西屋が来て、河童路地の入口で停った。
 そして、口上を述べだすと、種吉は路地の奥へ飛んで行き、直ぐお辰と一緒に出て来た。
 柳吉と蝶子が高津神社坂下に間口一間、奥行三間半のちっぽけな店を借りうけてはじめた剃刀店の売り出しの東西屋らしいと、きいて君枝にもおぼろげに判った。
「ひとつうちのお父つぁん[#底本では「お父っあん」となっている]の天婦羅の店の前で、景気ようやっとくれやす」
 蝶子は東西屋に言ったのであろう、東西屋は今朝蝶子たちの店の前でやったのと同じくらい念入りに賑やかに口上を述べた。
 朝日軒の敬吉が出て来て、
「種さん、おまはんもこいで一安心やな」
 と、言うと、
「さいな。売れてくれると宜しおまっけど、さて開いて見たら、耳かきぐらいしか売れへんのとちがいまっか」
 種吉はちょっと
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