蒲団かぶって寝ていたのだと、ぶつぶつ言うと、君枝はぺたりと尻餅ついて、ああ、えらいことになってしもたと、子供心にこたえたようだった。
 俥がなくては商売が出来ず、まる二日は魂が抜けたようになって、あちこち探しまわったり、
「ああ、もう焼糞や。焼の勘八、日焼けの茄子や」
 と言いながら、畳の上に仰向けになってごろんごろんしていた。
 が、三日目の黄昏前、君枝がさすがに浮かぬ顔をして下足の番をしていると、
[#ここから2字下げ、底本では一行目は1字下げ]
「えーうどんの玉ア
あつあつのお玉ちゃん
白い着物《べべ》きて朝から晩まで湯にはいり
つるつるの肌した
別嬪ちゃんのお玉ちゃん
十オあって五銭」
[#ここで字下げ終わり]
 と触れ歩いている声がきこえ、よく聴くと他吉の声だった。
 もう腰の曲る歳で、荷が重いらしく、声もしわがれていた。
「まいどおおけに」
 下足を渡して、客の出たあとより飛んで出ると、他吉はにこにこしながら、
「どや似合うか」
「よう似合《にお》てるわ」
 君枝の声に合わせて、種吉も天婦羅あげながら、
「他あやん、おまはんその方がよう似合てるぜ。声もわるないな」
「そやろ
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