ていた君枝ははじめて微笑した。
「まあ洋食焼きみたいなもん……」
「そうだっせ、ほんまに情けない。主人《うっとこ》ももうあんた、そろそろ五十や言うのに、いまだにあんな子供みたいなもん食べたがりまんねん。みっともないこっちゃ」
蝶子はそんな風に言ったが、ふと想いだしたように、
「――この辺にどこぞ夜店出まへんか」
「さあ……? 今日は何の日でしたかな」
「えーと……」
考えていたが、いきなり膝をたたいて、
「――そうそう、今日はお午の日や。お午の夜店や。帰りに洋食焼き買うて帰らんと、また、小言いわれる」
ぶくぶく肥満して、屈託の無さそうな蝶子を見ていると、君枝は瞬間慰められて、他吉の死を忘れたが、ふと、遠くの汽笛を聴くと、涙がこみあげて来た。
「勝手なことばっかり喋って……」
君枝の涙を見て、蝶子はさすがにいい気なことを言い過ぎたことに気がついた。
「そろそろおいとまさせてもらいまひょ」
立ち上り、階段を降りながら、しかし、蝶子はまた言った。
「――あとで、主人《うっとこ》がお邪魔するかも判れしまへんさかい、なんぞ帳面づけの用事でもあったら、さしとくなはれ。字を書くことでしたら
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