、持って来たげてん」
 と、風呂敷包みを君枝に渡した。
「えらい心配かけて、済んまへん」
 君枝は蝶子がその喪服をつくった時のことを知っていた。柳吉の父親の病気がいよいよいけなくなった時、葬式に出られるつもりで、蝶子はそれをつくったのだった。が、参列をはねつけられて、蝶子はどんなにそれを悲しんだことか。
 が、それも今は遠い出来ごとで、蝶子の悩みの種であった柳吉の娘も、去年の暮に結婚して、その婚礼には蝶子も柳吉と一緒に出席したという。
 恐らく、この喪服を貸してくれる今の蝶子の気持にはなにひとつ暗い影は射していないであろうと、君枝は思いながら、受け取った。
「あんたも、両親には縁が薄いし、他あやんはとられてしまうし、ほんまに運がわるいなあ。しかし、次郎さんがしっかりしたはるさかい、心強いわな」
 蝶子はそう言ったあと、
「――主人《うっとこ》もこの頃はとんと真面目になってな、酒は飲まへんし、食物の道楽もせんようになったし、まあ、夜店の洋食焼きを毎晩食べたがるくらいなもんや」
 柳吉のことを嬉しそうに言った。おくやみに来て、亭主ののろけを言うのがいかにも蝶子らしいと、今日一日笑う力を失っ
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