れがましいとこやけど、他あやんなんぜまたこんな時に病気したんやねん。わいの師匠の初代春団治ちゅう人は朱塗りの人力で寄席をまわって、えらい豪勢やったけど、わいはこの歳になるまで、エレヴェーターには乗ったけど、人力いうもんには、到頭いっぺんも乗らずじまいやった」
「その代り、お前の落語も日本じゃ一ぺんも受けずじまいやったな」
 病気で衰弱していても、他吉は〆団治に向うと、相変らず口が悪かった。
「その代り、向うでは受けるわいな。なんし競争相手が無いさかいな。それにわいの黒い顔は丁度南向きや」
「南向きやて、なんやこう、貸家探してるみたいや」
 君枝は笑った。が、他吉の痛々しく痩せ衰えた顔を見ると、すぐ笑いやんだ。
「向うへ行ったらな、イの一番に南十字星見てこましたろ思てるねん」
 と、〆団治は言った。
「――もう、南十字星てどの方角に出てる星やねんちゅうような、ぼけた[#「ぼけた」に傍点]ことは言わへんぞ。実はな、向うへ行て、空を見て、どれが南十字星か判らんかったら恥やさかいな、昨日うちの会社の文芸部の男に案内してもろて、四ツ橋の電気科学館へ行て、プラ、プラ、プラチナ……」
「プラネタリュ
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