どでは、女人夫三人ぐらいで行われるが、十尋二十尋ではもう女の力に余って、六人から八人もの男の力を借らねばならない俗に「喞筒押し一升飯」といわれるほどの労働なのだ。
「女にはとても出来んよ」
 そう言うと、君枝は、
「うち今まで毎日お祖父ちゃんの俥のタイヤに空気入れてたさかい、喞筒押しするのん上手やし。こない言うて、なんやこう、あんたに離れるのがいやで言うみたいやけど……」
 ぽっと赧くなった。
 そんな君枝が次郎にはたまらなく可愛かった。
「そんなら一しょに行ってもらほか。喞筒押しでなくても、ホース持ちなら出来るやろ」
 ホース持ちは、空気の過不足の合図を受ける大切な役目で、昔は潜水夫の妻がこれをしていたのである。
 鶴富組の主人は腕利きの潜水夫が無くて弱っていたところだったので、次郎と君枝が現場へ現われると、
「よく気が変ってくれたもんだね」
 と、喜んだ。次郎は、
「人間はたまに怪我もして見んならんもんですよ」
 と、笑って、五十尋の深海へ潜った。
 君枝がホースを持っているのだと思えば、次郎はもうどんな危険もいとわぬ気がして、そして、マニラで死んだという君枝の父親の気持が、ふっと
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