を握ったとたんに、もう君枝は尻餅をついて、便利屋の前はたちまち人だかりがした。
君枝は鼻の上に汗をためて、しきりに下唇を突きだして跨り、跨り、漸くのことで動きだすと、
「退《ど》いとくれやっしゃ。衝突しまっせ。危のおまっせ」
と、金切声で叫び、そして転んで、あはははと笑った。
亭主が怪我をして入院しているというのに、この明るさはどこから来ているのかと、便利屋の主人はあきれた。
翌日から君枝は、病院へ便利屋の電話が掛ると、いそいそと出掛け、リヤカーをつけて配達にまわった。
ある日、仏壇を積んで、南河内の萩原天神まで行った。
堺の三国を過ぎると、二里の登り道で、朝九時に大阪を出たのに、昼の一時を過ぎても、まだ中百舌鳥《なかもず》であった。
里子にやられていた幼い頃のことを想いだしながら、木蔭[#「木蔭」は底本では「本蔭」と誤記]で弁当をひらいていると、雨がぱらぱらと来て、急に土砂降りになった。
合羽を仏壇にかぶせ、自身は濡れ鼠になりながらペタルを踏み、やっと目的地について、仏壇を届けて帰る道もなお降っていたが、それでもへこたれようとしなかったのは、子供の頃からさまざまな苦労
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