地へ連れ戻して置けば、次郎はもうあとの心配もなく、かつ発奮して再び潜りだすだろうという他吉の単純な考えを、君枝もまた持たぬわけではなかったのだ。もちろん、次郎が潜りだせば、他吉の気も折れて、もと通り一緒に暮せるだろうとの呑気な気持で、今のうちに祖父に孝行して置こうとせっせと働いていたのだった。
 ところが、ある日、蝶子がひょっくり河童路地へ顔を見せて、君枝を掴えて言うのには、
「あんた、ぼやぼやしてたら、あかんしイ」
「いったい何やの?」
「何やのて、ほんまに、えらいこっちゃ。あんたとこの人が、昨夜《ゆんべ》うちの店へ来て、散財しやはってん」
「えッ?」
 君枝は驚いた。次郎は酒は潜水病のもとだと言って、これまで一滴も飲まなかったのに、いつの間に飲むようになったのかと、本当には出来なかった。
「うちかて商売やさかい、お酒を出さんわけにはいかへんし、といって、あんたの旦那はんにあんまり散財させるわけにいかへんし、ほんまに困ったわ。因果な商売してしもたもんや」
 謝るように蝶子は言った。
「いいえ、そんなこと。ほんまに心配かけてしもて」
 君枝がそう言うと、蝶子はさてといった顔になって、

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