はさっさと帰ってしまった。
 持子は泣いておたかに迫った。
 おたかもはじめて事態を悟り、仲人を追いかえしたことを後悔した。
 そこで、改めて敬助が先方の男に会うた。
 ところが、職人気質のその男は、折角仲人に頼んだ友達の顔に泥を塗られたと言って、かんかんになって怒っていた。
「なるほど、わたいは鋳物の職人です。しかし、お宅もやはり人の頭を刈る職人でっしゃろ。五分々々ですがな。それに、わたいはあのひとのお腹にいる子供の父親でっせ」
 敬助は帰って、おたかに、仲人になった男に謝るようにと頼んだ。
「この歳になって、人様《ひとさん》に頭下げるのは、いやだっせ」
 おたかはなかなか承知しなかった。
「そんなこと言うてる場合と場合がちがうがな。持子のお腹のこと考えてみイな」
 口酸っぱく言われて、それでは謝ってみましょうと、おたかの腹がやっときまりかけた時に、幸か不幸か、持子の相手の男が盲腸をわずらって、ころっと死んでしまった。
 おたかの髪の毛は真っ白になった。持子のお腹は目立って来る。
 朝日軒一家は田辺の方へ引き越した。
「こんどのところは、郊外でんねん。家の前に川が流れていて、ほん景の
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