ころだったろうが、彼は七年前に河童路地を夜逃げしていた。トーキーが出来てから、弁士では食って行けず、暫らく紙芝居などやっていたが、それもすたれて、貧乏たらしくごろごろしていたが、ある日忽然と河童路地から姿を消したのだった。最近、梅田附近の露店で手品の玩具を売っているのを見た者があるという。
 姙娠と同時に縁談があった。勿論、相手の男だったが、仲人をいれず、自身でしゃあしゃあ出向いて来て、持子さんをいただけないかと言ったのである。
「物には順序というもんがおます」
 おたかはかんかんになって怒った。今更順序など言いだすのはおかしい。はじめから、順序が狂い過ぎていたのである。
 その男はしかし、一寸考えて、やがて友達を仲人に仕立てて、寄越した。
 ところが、その友達というのが、その男と同じ鋳物の職工で、礼儀作法なぞ何ひとつ知らぬ、いわば柄の良くない男であった。
「うちの持子は女学校を出ていますさかいな」
 おたかはそんな風に言った。その界隈で大正時代に娘を女学校へやった家は数えるほどしかなかったのである。
「――鋳物の手伝いをさせるために、女学校へやったんとちがいます」
「さよか」
 仲人
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