が〆団治といっしょに帰ろうとすると、次郎と君枝は引き止めて、
「お祖父やん、今日は家で泊ってくれはれしまへんのんか?」
「当り前やないか」
 他吉に代って、〆団治が答えた。
「――若夫婦のところへ、こんな老いぼれの他あやんが居てみイ。陰気臭いやら邪魔ややら」
 〆団治は口が悪かったが、他吉は今夜は怒らなかった。ふん、ふんと上機嫌にうなずいている。
「まあ、いやな〆さん」
 白粉の奥が火を吹いた。次郎もちょっと照れたが、
「ちょっともそんな遠慮要らへん。今夜は泊ってくれはるやろ思て、ちゃんと寝床《ねま》もとっといたのに……もう、帰りの電車もあれしまへんやろ」
「無かったら、歩いてかえる」
「ここから河童路地まで何里ある思てんのん? お祖父ちゃん、〆さんにひとり帰ってもらうのん気の毒やったら、あとさし[#「あとさし」に傍点、底本では「あとさ」に傍点]ででも一緒に寝て貰たらええがな……」
「いや、帰る。何里あろうが、俥ひいて走るよりは楽や。なあ、〆さん。退屈したら、お前の下手な落語でもきかせて貰いながら歩くわな」
「どついたろか、いっぺん」
 〆団治は他吉の頭の上で、拳をかためて見せた。
 
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