。時局がこういう風になって来ると、花井君などもうわれわれ個人会社にいつまでも居る人じゃない。いつなんどき海外へ出て、沈船作業に腕をふるって貰わねばならんようになるかも知れない。だから、余程しっかりした奥さんでなくっちゃ」
「いや、その心配は要りまへん。わたいもこう見えても、もとは比律賓のベンゲットで働いて来た人間だす。婿をマニラで死なしても居ります。その点は、よう君枝に仕込んでありまっさかい」
よしんば形式だけにしろ見合いという順序を踏んだのは、ひとつには、ともかくうちの孫娘を見てやってくれ、という自信からだったが、さすがに他吉は心配だったのだ。
ところが、鶴富組の主人は、一風変った一見識あり、タクシーの案内係の制服のまま見合いに出て来たという点が何よりまず気に入った。
鶴富組の主人は大きな事業をやり、随分金もありながら、汽車はいつも三等に乗るという人であった。
「一等や二等に乗ったからって、早く着くわけじゃない」
というのが持論であった。
そうして次郎と君枝は市岡の新開地で新世帯をはじめたが、新居でおこなわれた婚礼の晩ちょっとしたごたごたがあった。
おひらきが済んで、他吉
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