かであった。
「――なんでも良え。とにかく見合いしなはれ」
「…………」
咽の涙を鹹《しお》からく、君枝はしょんぼり味わった。
「するか、せんか。どっちや。返辞せんかい! するか?」
君枝はうなずいた。
6
翌日はまるでわざとのように雨であった。
「なんの因果でまた、こんな雨の日に見合いせんならんねん」
君枝はしょんぼりして、この五日間祖父のいいつけを守って次郎に会わなかったことが後悔された。いや、中之島公園で会った翌日、勤めが済むと、早速約束して置いた場所へ出掛けたのだが、次郎は来なかったのだ。祖父が次郎のところへ掛け合いに行ったせいだろうと、すごすご帰った時の悲しみが、降るようにして、いま胸へ落ちて来た。
が、他吉は上機嫌で、
「雨が降っても、見合いの場所は地下鉄のなかやさかい、濡れんでも良え。どや、お祖父やんは抜目がないやろ?」
「…………」
他吉は高下駄をはき、歩きにくそうであった。
ところが、難波駅の地下へ降りて行くと、さきに来て地下鉄の改札口で待っていたのは、思いがけぬ次郎で、傍には鶴富組の主人が親代りの意味らしく附き添うていた。
君枝はぼうっ
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