つぞやそんなことも言うてましたけど……。お前の身がかたづいたら、わいはもういっぺんマニラへ行こ思てるねんて……」
「そんなら、余計はよ結婚せないかんね」
「――まあ。意地悪《いけず》なことよう言やはるなあ」
「――そうかて、そうやないか。好きな人あったら、はよ結婚して、他あやんを安心さしたらな、いかんぜ」
「――知らん。うち結婚みたいなもん、せえへん。好きな人みたいなもんちょっともあれへん。それに、うちひとりやったらともかく、お祖父ちゃんの面倒まで見てくれるいう人今時あれへんわ。うち、お祖父ちゃんの生きてる間、結婚せえへん」
「――そんなこと言うたら、余計他あやんを苦しめるもんや」
「――そやろか。しかし、それよか仕様ない。ほかに仕様があれへんわ」
「――ないこともないがな。たとえばやな……。たとえば、僕と結婚したら……」
「――あんた、平気で冗談《てんご》言やはんねんなあ」
「――冗談や思てるのん?」
「――ほな……?」
「――うん」
 想いだしていた君枝はまた顔をあげて、
「次郎さんやったら……」
 お祖父ちゃんの面倒もみてくれる、三人で住めば良いのだと、もじもじ言うと、
「阿呆!
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