いち年寄りに逆らうもんやあれへん。次郎ぼんであろうが、太郎ぼんであろうが、若い娘が男とちゃらちゃら会うたりするもんと違う。だいいち、次郎ぼんの仕事に差しつかえる。ええか。こんどめ[#「こんどめ」に傍点]から会うたらあきまへんぜ」
蚊帳の中へはいってからも、他吉の小言は続いた。
君枝は首垂れて他吉の方に団扇で風を送っていたが、ふと顔をあげると、耳の附根まで赧くなり、
「あのな、次郎さんな、今日、うちと……」
団扇の動きがとまった。
「――うちと夫婦になりたいと言やはんねん」
「…………」
他吉の顔の筋肉がかすかに動いた。
暫らく沈黙が続いた。蚊の音がはげしかった。
君枝は今日中之島公園で次郎とかわした会話を慌しく膝の上に想い出した。
「――他あやん、いつまで俥ひいたはる気やろな。なんぼえらそうなこと言っても、やっぱり歳は歳やさかい……」
「――隠居してくれ言うても、なかなか隠居してくれしめへんねん。うちに甲斐性が無いさかい……」
「――そんなことは無いやろけど……。他あやんにしてみたら、早よあんたに良えお婿さんを貰て、それから隠居しよ思たはるのんと違うやろか」
「――さあ。い
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