ットやマニラにいた時、毎晩見てた星やぞ。あの星を見た者は、広い大阪に、このわいのほかには沢山《たんと》は居れへんネやぞ、見たかったら、南へ行け、南へ!」
と、言ったあと、涼み話の仲間入りをしようともせず、這うようにしてあがった畳の上へごろりと転がると、君枝がつくって置いた冷しそうめんも食べずに、そのまま鼾だった。
君枝は今日次郎に会ったことを言いそびれた。
言えば、他吉はびっくりもし、喜びもするだろうと思ったが、他吉の知らぬ間に次郎と会うたことがなにか済まないような気がするのだった。
その癖、次郎のことを口にだしたくて仕方がないのだ。寝転んでいる他吉の上へ蚊帳を釣りながら、よっぽど起して、そうめんを一緒に食べながら、次郎のことを言い、プラネタリュウムの話もしようと思ったが、ぐんなりして鼾をかいている他吉の寝顔を見ると、起す気にはなれなんだ。
「明日の朝話そ」
君枝は呟いたが、朝起きざまに、今日は次郎に会うのだという考えが、ぽっと頭に泛ぶと、やはり君枝は次郎のことを言いそびれてしまった。
5
お渡御《わたり》に出て、すっかり疲れ切っていたが、しかし、他吉は夜が明
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