君枝はいきなり、きんきんした声をあげて、
「〆さん、あんたアンドロメダ星座いうのん知ったはる?」
「なんや? アンロロ……? 舌噛ましイな――根っから聴いたことおまへんな。そんな洋食できたんか?」
「阿呆やな。洋食とちがう、星の名や」
君枝は肩をくねくねさせて笑い、
「――ほな、南十字星は……?」
「学がないおもて、そない虐めなや。しかし、おまはんはえらいまた学者になったもんやなあ」
「そら、もう……」
と、君枝は足を拭きながら、ぺろッと舌を出し、明日の夕方は中之島公園で次郎ぼんに会うのや。いそいそ下駄をはいていると、あまい気持がうずくように来て、あ、いけない、これが恋とか愛とかいうもんやろか。胸を抱くようにして呟いているところへ、お渡御が済んだらしく、他吉と種吉がとぼとぼ帰って来た。
君枝はいきなり胸が痛み、埃まみれの他吉の足を洗ってやるのだった。
他吉は余程疲れていたのか、〆団治が、
「こうーっと、南十字星てどの方角に出てる星やろか?」
と、しきりに空を仰ぎながら言ったのへ、
「あんぽんたん! 南十字星が内地で見えてたまるかい。言うちゃなんやけど、あの星はな、わいがベンゲ
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