だ。幻燈のようであった。
 あえかな美しさにうっとりしていると、解説者は南十字星へ矢印の青い光を向けて、
「――さて、皆さん、ここに南十字星が現われて、わたし達はいよいよ南方の空までやって来ました。時刻はマニラの午前一時、丁度真夜中です。しんと寝しずまったマニラの町を野を山を椰子の葉を、この美しい南十字星がしずかに見おろしているのです」
 マニラときいて、君枝は睡気からさめた。
「あ」
 君枝は声をあげて、それでは祖父はあの星を見ながらベンゲットで働き、父はあの星を見ながらマニラでひとりさびしく死んだのかと、頬にも涙が流れて流星が眼にかすみ、そんな自分の心を知ってプラネタリュウムを見せてくれた次郎の気持が、暗がりの中でしびれるほど熱く来た。
 次郎と別れて、河童路地へ戻って来ると、祭の夜らしく、〆団治や相場師や羅宇しかえ屋[#「羅宇しかえ屋」は底本では「羅字しかえ屋」と誤記]の婆さんなどが、床几を家の前の空地へ持ちだして、洋服の仕立職人が大和の在所から送ってくれたといって持って来た西瓜を食べながら、夕涼みしていた。西瓜の顔を見ると、庖丁を取りだしてくる筈の種吉は、他吉といっしょにお渡御
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