》の人足に雇われたのを機会に、手を引いた。帰りしな、林檎はよくよくふきんで拭いて艶を出すこと、水蜜桃には手を触れぬこと、いったいに果物は埃を嫌うゆえ始終はたきをかけることなど念押して行った。
 その通りに心掛けたが、しかしどういうものか足が早くて水蜜桃など瞬く間に腐敗した。店へ飾って置けぬから、辛い気持で捨てた。毎日捨てる分が多かった。といって品物を減らすと店が貧相になるので、仕入れを少なくするわけにも行かず、巧く捌けないと焦りが出た。儲けもあるが損も勘定に入れねばならず、果物屋も容易な商売ではないとだんだん分って来ると、急に柳吉に元気がなくなった。
 蝶子は柳吉がもう果物屋商売に飽きたのかと、心配しだした。が、その心配より先に柳吉は病気になった。もうせんから柳吉はげてもの料理を食べ過ぎたせいか胃腸が悪くて、二ツ井戸の実費医院《じっぴ》へ通い通いしていたが、こんどは尿に血がまじって、小用の時泣声を立てた。実費医院で診て貰うと、泌尿科の専門医へ行くが良かろうとのことで、島ノ内のK病院が有名だときいて、診せると、膀胱がわるいという。
 十月ばかり通ったが、はかばかしくなおらなかった。みるみ
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