一晩に二百個売れたと種吉は昔話をし喜んで手伝うことを言った。
種吉は娘夫婦の商売を手伝うことが嬉しくてたまらぬ風であった。店びらきの日、筋向いにも果物屋があるのを見て、「西瓜屋の向いに西瓜屋が出来て、西瓜《すいた》同志の差し向い」と淡海節の文句を言いだした。その果物屋は店の半分が氷店になっているのが強味で、氷かけ西瓜で客を呼んだから、白然蝶子たちは切身の厚さで対抗しなければならなかった。が、言われなくとも種吉の切り方は頗る気前が良かった。一個八十銭の西瓜で十銭の切身何個と胸算用して、柳吉がハラハラすると、種吉は、「切身でまけて丸口で儲けるんや。損して得とれや」と言った。そして、
「ああ西瓜や、西瓜や、うまい西瓜の大安売りや!」
と、派手な呼び声を出した。向い側の呼び声もなかなか負けていなかった。蝶子も黙って居られず、
「安い西瓜だっせエ!」
と、金切り声を出した。それが愛嬌で客が来た。蝶子は鞄のような大きな財布を首から吊して、売り上げを入れたり、釣銭を出したりした。
柳吉は割合熱心に習ったので、四五日すると西瓜を切る要領などを覚えた。種吉は丁度生国魂の祭で例年通りお渡御《わたり
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