る痩せて行った。蝶子も身体は肥えていたが、眼のふちが黝み、柳吉の病気が気がかりでならなかった。診立て違いということもあるからと、市民病院で診て貰うと、果して違っていた。レントゲンを掛けて腎臓結核だとわかった。その日から、入院した。
附添いのため店を構っていられなかったので、蝶子は止むなく店を閉めた。果物が腐って行くことが残念だったから、種吉に店の方を頼もうと思ったのだが、運の悪い時はどうにも仕様のないもので、母親のお辰が四五日まえから寝ついていたのだ。子宮癌とのことで、今日明日がむつかしかった。
柳吉が腎臓を片一方切るという大手術を受けた翌朝、お辰は死んだ。蝶子は柳吉の傍に附き切りで、母親の死に目に会えなかった。柳吉の命が助かったことだけがせめてもの慰めだったが、しかし、親不孝者だという気持は矢張りチクチク胸を刺して来た。お辰は蝶子が駈けつけて来ぬことをすこしも恨まず、それどころか、「維康さんも蝶子のために、苦労して来やはった。維康さんの手術《しりつ》が味善《あんじょ》ういってくれたら、わては蝶子の顔見んと死んでも満足や」と、蝶子を俥で迎えに言ってやろうといいだした他吉へ言った――
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