梵雲庵漫録
淡島寒月
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)朧《おぼ》ろげな
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)幕府|瓦解《がかい》の頃
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)どんどん[#「どんどん」に傍点]と称して
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幼い頃の朧《おぼ》ろげな記憶の糸を辿《たど》って行くと、江戸の末期から明治の初年へかけて、物売や見世物の中には随分面白い異《かわ》ったものがあった。私はそれらを順序なく話して見ようと思う。
一
まず第一に挙げたいのは、花見時の上野に好《よ》く見掛けたホニホロである。これは唐人《とうじん》の姿をした男が、腰に張子《はりこ》で作った馬の首だけを括《くく》り付け、それに跨《またが》ったような格好で鞭《むち》で尻を叩く真似をしながら、彼方此方《あっちこっち》と駆け廻る。それを少し離れた処で柄の付いた八角形の眼鏡《めがね》の、凸レンズが七個に区画されたので覗《のぞ》くと、七人のそうした姿の男が縦横に馳《は》せ廻るように見えて、子供心にもちょっと恐ろしいような感じがしたのを覚え
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