とする者、向島へ渡るものは枯草の情趣を味うとか、草木を愛して見ようとか、遠乗りに行楽しようとか、いずれもただ物見遊山《ものみゆさん》するもののみであった。
       ◇
 向島ではこれらの風流人を迎えて業平《なりひら》しじみとか、紫鯉とか、くわいとか、芋とか土地の名産を紹介して、いわゆる田舎料理麦飯を以《も》って遇し、あるいは主として川魚を御馳走《ごちそう》したのである。またこの地は禁猟の域で自然と鳥が繁殖し、後年|掟《おきて》のゆるむに従って焼き鳥もまた名物の一つになったのである。如上|捕捉《ほそく》する事も出来ない、御注文から脱線したとりとめもないものに終ったが、予めお断りして置いた通り常にプレイする以外に研究の用意も、野心もない私に、組織的なお話の出来ようはずがないから、この度はこれで責《せめ》をふさぐ事にする。[#地から1字上げ](大正十四年八月二十四、五、六日『日本新聞』)



底本:「梵雲庵雑話」岩波文庫、岩波書店
   1999(平成11)年8月18日第1刷発行
※「ミケンジャク」のあとに編集部の注記がありますが、除きました。
※本作品中には、身体的・精神的資質、職
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