亡び行く江戸趣味
淡島寒月

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)向島《むこうじま》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)物々|総《すべ》てに

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
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 江戸趣味や向島《むこうじま》沿革について話せとの御申込であるが、元来が不羈放肆《ふきほうし》な、しかも皆さんにお聞かせしようと日常研究し用意しているものでないから、どんな話に終始するか予《あらかじ》めお約束は出来ない。
       ◇
 人はよく私を江戸趣味の人間であるようにいっているが、決して単なる江戸趣味の小天地に跼蹐《きょくせき》しているものではない。私は日常応接する森羅万象《しんらばんしょう》に親しみを感じ、これを愛玩《あいがん》しては、ただこの中にプレイしているのだと思っている。洋の東西、古今を問わず、卑しくも私の趣味性を唆《そそ》るものあらば座右に備えて悠々自適《ゆうゆうじてき》し、興来って新古の壱巻をも繙《ひもと》けば、河鹿笛《かじかぶえ》もならし、朝鮮太鼓も打つ、時にはウクレルを奏
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