寺内の奇人団
淡島寒月
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)名残《なごり》で、
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)沢山|誦《よ》んで
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)おれ[#「おれ」に傍点]の処に
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水族館の近所にある植込を見ると茶の木が一、二本眼につくでしょう。あれは昔の名残《なごり》で、明治の初年には、あの辺一帯茶畠で、今活動写真のある六区は田でした。これが種々の変遷《へんせん》を経て、今のようになったのですから、浅草寺寺内のお話をするだけでもなかなか容易な事ではありません。その中で私は面白い事を選んでお話しましょう。
明治の八、九年頃、寺内にいい合わしたように変人が寄り集りました。浅草寺寺内の奇人団とでも題を附けましょうか、その筆頭には先《ま》ず私の父の椿岳《ちんがく》を挙げます。私の父も伯父も浅草寺とは種々関係があって、父は公園の取払《とりはらい》になるまで、あの辺一帯の開拓者となって働きましたし、伯父は浅草寺の僧侶の取締みたような役をしていました。ところで父は変人ですから、人に勧め
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