祠《ほこら》を建てました。これは御狸様といって昔と位置は変っていますが、今でも区役所の傍にあります。
[#地から1字上げ](明治四十五年四月『新小説』第十七年第四巻)
◇
その御狸様のお告げに、ここに祀ってくれた上からは永く浅草寺の火防の神として寺内安泰を計るであろうとのことであったということです。
今浅草寺ではこのお狸様を鎮護大使者として祀っています。当時私の父椿岳はこの祠堂《しどう》に奉納額をあげましたが、今は遺《のこ》っていないようです。
毎年三月の中旬に近い日に祭礼を催します。水商売の女性たちの参詣が盛んであるようですが、これは御鎮護様《おちんごさま》をオチンボサマ[#「オチンボサマ」に傍点]に懸けた洒落《しゃれ》参りなのかも知れません。
[#地から1字上げ](大正十四年十一月『聖潮』第二巻第十号より追補)
底本:「梵雲庵雑話」岩波文庫、岩波書店
1999(平成11)年8月18日第1刷発行
※本作品中には、身体的・精神的資質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自
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