ました。この連中に、英国生れの力持《ちからもち》がいて、一人で大砲のようなものを担《かつ》ぎあげ、毎日ドンドンえらい音を立てたので、一時は観音様の鳩が一羽もいなくなりました。
それから最後に狸の騒動があった話をしましょう。ただ今の六区辺は淋《さび》しい処で、田だの森だのがありました。それを開いたのは、大橋門蔵という百姓でした。森の木を伐《き》ったり、叢《くさ》を刈ったりしたので、隠れ家を奪われたと見えて、幾匹かの狸が伝法院の院代をしている人の家の縁の下に隠れて、そろそろ持前《もちまえ》の悪戯《わるさ》を始めました。ちょっと申せば、天井から石を投げたり、玄関に置いた下駄を、台所の鍋の中に並べて置いたり、木の葉を座敷に撒《ま》いたり、揚句《あげく》の果には、誰かが木の葉がお金であったらいいといったのを聞いたとかで、観音様の御賽銭《おさいせん》をつかみ出して、それを降らせたりしたので、その騒ぎといったらありませんでした。前に申したスリエの曲馬で大砲をうった男が、よし来たというので、鉄砲をドンドン縁の下に打込む、それでもなお悪戯が止まなかったので、仕方がないから祀《まつ》ってやろうとなって、
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