に見られました。両国でも本家の四ツ目屋のあった加賀屋横町や虎横町――薬種《やくしゅ》屋の虎屋の横町の俗称――今の有名な泥鰌《どじょう》屋の横町辺が中心です。西両国、今の公園地の前の大川縁《おおかわべり》に、水茶屋が七軒ばかりもあった。この地尻に、長左衛門という寄席がありましたっけ。有名な羽衣《はごろも》せんべいも、加賀屋横町にあったので、この辺はゴッタ返しのてんやわんや[#「てんやわんや」に傍点]の騒《さわぎ》でした。東両国では、あわ雪、西で五色茶漬は名代《なだい》でした。朝は青物の朝市がある。午《ひる》からは各種の露店が出る、銀流《ぎんなが》し、矢場《やば》、賭博《とばく》がある、大道講釈やまめ蔵が出る――という有様で、その上狭い処に溢《あふ》れかかった小便桶が並んであるなど、乱暴なものだ。また並び床といって、三十軒も床屋があって、鬢盥《びんだらい》を控えてやっているのは、江戸絵にある通りです。この辺の、のでん賭博というのは、数人寄って賽《さい》を転がしている鼻《はな》ッ張《ぱり》が、田舎者を釣りよせては巻き上げるのですが、賭博場の景物には、皆春画を並べてある。田舎者が春画を見てては
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