銀座は昔からハイカラな所
淡島寒月

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)尾張町《おわりちょう》の

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)皆|舶来蝋燭《はくらいろうそく》を

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十年十月『銀座』資生堂)
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 今日でも「銀座」といえば何に限らず目新らしいもののある所とされていますが、以前「煉瓦」と呼ばれた時代にもあの辺は他の場所よりも一歩進んでいて、その時分の珍らしいものや、珍らしい事の多くはこの「煉瓦」にありました。いわば昔からハイカラな所だったのです。

     伊太利風景の見世物

 明治七、八年の頃だったと思いますが、尾張町《おわりちょう》の東側に伊太利《イタリー》風景の見世物がありました。これは伊太利人が持って来たもので、長いカンバスへパノラマ風に伊太利のベニスの風景だとか、ナポリの景だとかあるいはヴェスビアス火山だとかいったものが描いてあって、それを機械で一方から一方へ巻いて行くに連れてそれらの景色が順次正面へ現れて来ます。そうするとそ
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