異った味いがあった。チャプリンはさすがに米国一流の思い切った演出法であるから、それが現代人の趣味に適《かな》ってあれだけの名声を博したのであろう。
 それで近頃では数十巻連続ものなどが頗る流行しているが、これは新聞小説の続きもののように、後をひかせるやり方で面白いかも知れないが、やはり一回で最後まで見てしまう方がかえって興味があるように思われる。数十巻連続物などになると、自《おの》ずと筋の上にも場面の上にも同じようなものが出来て、その結局はどれもこれも芽出《めで》たし/\の大団円に終るようで、かえって興味がないようである。そこへ行くと、伊太利周遊だとか、東|印度《インド》のスマトラを実写したものだとかいう写真は、一般にはどうか知らないが、真の活動通はいつも喜ぶものである。
 よく端役《はやく》という事をいうが、活動写真には端役というべきものはないように思われる。どれもこれも総《すべ》てが何らかの意味で働いているように思われる。それから室の装飾の如き物は総てその場に出ているものに調和したものが、即ち趣味を以《も》って置かれている。決してお義理一遍になげやりにただ舞台を飾るというだけに置か
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