》の為めに老人の描いていた希望は殆《ほと》んど空《くう》になって了った。先生何が何やら解らなくなって了った。其所《そこ》で疳《かん》は益々起る、自暴《やけ》にはなる、酒量は急に増す、気は益々狂う、真《まこと》に言うも気の毒な浅ましい有様となられたのである、と拙者は信ずる。
 現に拙者が貴所《あなた》の希望に就き先生を訪うた日などは、先生の梅子|嬢《さん》を罵《ののし》る大声《たいせい》が門の外まで聞えた位で、拙者は機会《おり》悪《わる》しと見、直《ただち》に引返えしたが、倉蔵の話に依ればその頃先生はあの秘蔵子なるあの温順なる梅子|嬢《さん》をすら頭ごなしに叱飛《しかりとば》していたとのことである、以て先生の様子を想像したまわば貴所も意外の感あることと思う。
 拙者ばかりでなくこういう風であるから無論富岡を訪《たず》ねる者は滅多になかった、ただ一人、御存知の細川繁氏のみは殆ど毎晩のように訪ねて怒鳴られながらも慰めていたらしい。
 然るに昨夕《さくせき》のこと富岡老人近頃|病床《とこ》にある由《よし》を聞いたから見舞に出かけた、もし機会《おり》が可かったら貴所の一条を持出す積りで。老人はな
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