富岡先生
国木田独歩

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)詳細《くわし》い

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)何|公爵《こうしゃく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)東京へ※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
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        一

 何|公爵《こうしゃく》の旧領地とばかり、詳細《くわし》い事は言われない、侯伯子男の新華族を沢山出しただけに、同じく維新の風雲に会しながらも妙な機《はずみ》から雲梯《うんてい》をすべり落ちて、遂《つい》には男爵どころか県知事の椅子|一《ひとつ》にも有《あり》つき得ず、空《むな》しく故郷《くに》に引込んで老朽ちんとする人物も少くはない、こういう人物に限ぎって変物《かわりもの》である、頑固《がんこ》である、片意地である、尊大である、富岡先生もその一人たるを失なわない。
 富岡先生、と言えばその界隈《かいわい》で知らぬ者のないばかりでなく、恐らく東京に住む侯伯子男の方々の中にも、「ウン彼奴《やつ》か」と直ぐ
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