非凡なる凡人
国木田独歩

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)噂《うわさ》しあった

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一人|殖《ふ》えれば

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ワット[#「ワット」に傍線]
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     上

 五六人の年若い者が集まって互いに友の上を噂《うわさ》しあったことがある、その時、一人が――
 僕の小供《こども》の時からの友に桂正作《かつらしょうさく》という男がある、今年二十四で今は横浜のある会社に技手として雇われもっぱら電気事業に従事しているが、まずこの男ほど類の異《ちが》った人物はあるまいかと思われる。
 非凡人《ひぼんじん》ではない。けれども凡人でもない。さりとて偏物《へんぶつ》でもなく、奇人でもない。非凡なる凡人というが最も適評かと僕は思っている。
 僕は知れば知るほどこの男に感心せざるを得ないのである。感心するといったところで、秀吉《ひでよし》とか、ナポレオンとかそのほかの天才に感心するのとは異うので、この種の人物は千百歳に一人も出るか出ないかであるが、桂正作のごときは平凡な
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