て漸《やつ》と諸君《しよくん》の晝飯《ちうはん》が了《をは》り、自分《じぶん》は二|個《こ》の空箱《あきばこ》の一《ひとつ》には笹葉《さゝつぱ》が殘《のこ》り一には煮肴《にざかな》の汁《しる》の痕《あと》だけが殘《のこ》つて居《ゐ》る奴《やつ》をかたづけて腰掛《こしかけ》の下《した》に押込《おしこ》み、老婦人《らうふじん》は三|個《こ》の空箱《あきばこ》を丁寧《ていねい》に重《かさ》ねて、傍《かたはら》の風呂敷包《ふろしきづつみ》を引寄《ひきよ》せ其《それ》に包《つゝ》んで了《しま》つた。最《もつと》も左樣《さう》する前《まへ》に老人《らうじん》と小聲《こゞゑ》で一寸《ちよつ》と相談《さうだん》があつたらしく、金貸《かねかし》らしい老人《らうじん》は『勿論《もちろん》のこと』と言《い》ひたげな樣子《やうす》を首《くび》の振《ふ》り方《かた》で見《み》せてたのであつた。
此二《このふたつ》の悲劇《ひげき》が終《をわ》つて彼是《かれこれ》する中《うち》、大磯《おほいそ》へ着《つ》くと女中《ぢよちゆう》が三|人《にん》ばかり老人夫婦《としよりふうふ》を出迎《でむかへ》に出《で》て居《ゐ》て
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