》の評判《ひやうばん》ものとなり、人々《ひと/″\》は何時《いつしか》この漢《をとこ》を仙人《せんにん》の一人《ひとり》にして了《しま》ひ、女は此《この》庄園《しやうゑん》の傍《そば》を通《とほ》る時など被面衣《かつぎ》の下でコソ/\と噂《うはさ》してゆく、男の中《うち》には脱帽《だつばう》して通《とほ》るものすらあつた。
けれど小供《こども》こそ眞《まこと》の審判官《しんぱんくわん》で、小供《こども》の眼《め》にはたゞ變物《かはりもの》の一人《ひとり》としか見《み》えない。嬲物《なぶりもの》にして慰《なぐ》さむに丁度《ちやうど》可《よ》い男《をとこ》としか見《み》えない。であるから學校《がくかう》の歸途《かへりみち》には大勢《おほぜい》が其《その》崩《くづ》れ落《おち》た壁《かべ》に這《は》いのぼつてワイ/\と騒《さわ》ぐ、手《て》を拍《う》つやら、囃《はや》すやら、甚《はなは》だしきは蜜柑《みかん》の皮《かは》を投《な》げつけなどして揄揶《からか》うのである。けれども何《なん》の效果《きゝめ》もない。怠惰屋《なまけや》は決《けつ》して起《お》き上《あが》らない、たゞ一度《いちど》
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