、草《くさ》の臥床《ねどこ》の中《なか》から間《ま》の拔《ぬ》けた聲《こゑ》を張上《はりあ》げて
『見《み》て居《ゐ》ろ! 起《お》きてゆくから!』
と怒鳴《どな》つたことがある。然《しか》し遂《つひ》に起《お》きあがらなかつた。
處《ところ》が或日《あるひ》のこと、やはり學校《がくかう》の歸途《かへり》に庄園《しやうゑん》の壁《かべ》の上《うへ》でラクダルを揄揶《からか》つて居《ゐ》た少年《こども》の中に、何《なん》と思《おも》つたか甚《ひど》く感心《かんしん》して了《しま》ひ自分《じぶん》も是非《ぜひ》怠惰屋《なまけや》にならうと決心《けつしん》した兒《こ》が一人《ひとり》あつた。つまりラクダルに全然《すつかり》歸依《きえ》して了《しま》つたのである。大急《おほいそ》ぎで家《うち》に歸《か》へり、父に向《むか》つて最早《もう》學校《がくかう》には行《い》きたくない、何卒《どうか》怠惰屋《なまけや》にして呉《くれ》ろと嘆願《たんぐわん》に及《およ》んだ。
『怠惰屋《なまけや》に? お前《まへ》が?』
と親父《おやぢ》さん開《あ》いた口《くち》が塞《ふさ》がらない。暫時《しばら》く我
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