たりまへ》に坐《すわ》る、愚息《せがれ》はゴロリ臥《ね》ころんで足《あし》を蹈伸《ふみのば》す、この臥轉《ねころ》び方《かた》が第一《だいゝち》上出來《じやうでき》であつた。三人《さんにん》は其《その》まゝ一言《ひとこと》も發《はつ》しない。
恰度《ちやうど》日盛《ひざかり》で太陽《ひ》は燦然《ぎら/\》と煌《かゞや》き、暑《あつさ》は暑《あつ》し、園《その》の中《なか》は森《しん》として靜《しづ》まり返《かへ》つて居《ゐ》る。たゞ折々《をり/\》聞《きこゆ》るものは豌豆《ゑんどう》の莢《さや》が熱《あつ》い日に彈《はじ》けて豆《まめ》の飛《と》ぶ音《おと》か、草間《くさま》の泉《いづみ》の私語《さゝやく》やうな音、それでなくば食《く》ひ飽《あき》た鳥《とり》が繁茂《しげみ》の中《なか》で物疎《ものう》さうに羽搏《はゞたき》をする羽音《はおと》ばかり。熟過《つえすぎ》た無花果《いちじく》がぼたりと落ちる。
其中《そのうち》腹《はら》が空《すい》て來《き》たと見《み》えてラクダルは面倒臭《めんだうくさ》さうに手を伸《のば》して無花果《いちじく》を採《とつ》て口《くち》に入《い》れた。
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