き、一|見《けん》を求《もとめ》に來《き》た、雲飛《うんぴ》は大得意《だいとくい》でこれを座《ざ》に通《とほ》して石を見せると、某《なにがし》も大に感服《かんぷく》して眺《ながめ》て居たが急《きふ》に僕《ぼく》に命《めい》じて石を擔《かつ》がせ、馬《うま》に策《むちう》つて難有《ありがた》うとも何《なん》とも言はず去《い》つてしまつた。雲飛《うんぴ》は足《あし》ずりして口惜《くやし》がつたが如何《どう》することも出來《でき》ない。
さて某《なにがし》は僕《ぼく》を從《したが》へ我家《わがや》をさして歸《かへ》る途《みち》すがら曩《さき》に雲飛《うんぴ》が石を拾《ひろ》つた川と同《おなじ》流《ながれ》に懸《かゝ》つて居る橋《はし》まで來ると、僕《ぼく》は少《すこ》し肩《かた》を休《やす》める積《つも》りで石を欄干《らんかん》にもたせて吻《ほつ》と一息《ひといき》、思《おも》はず手が滑《すべ》つて石は水煙《みづけむり》を立《た》て河底《かてい》に沈《しづ》んで了《しま》つた。
言《い》ふまでもなく馬《うま》を打《う》つ策《むち》は僕《ぼく》の頭上《づじやう》に霰《あられ》の如く落《お》
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