は小学校に出していたのが、二人とも何一つ学び得ず、いくら教師が骨を折ってもむだで、到底ほかの生徒といっしょに教えることはできず、いたずらに他の腕白《わんぱく》生徒《せいと》の嘲弄《ちょうろう》の道具になるばかりですから、かえって気の毒に思って退学をさしたのだそうです。
なるほど詳しく聞いてみると、姉も弟《おとと》も全くの白痴であることが、いよいよ明らかになりました。
しかるに主人《あるじ》の口からは言いませんが、主人《あるじ》の妹、すなわちきょうだいの母親というも、普通から見るとよほど抜けている人で、二人の子供の白痴の原因は、父の大酒にもよるでしょうが、母の遺伝にも因ることは私はすぐ看破しました。
白痴教育というがあることは私も知っていますが、これには特別の知識の必要であることですから、私も田口の主人《あるじ》の相談にはうかと乗りませんでした。ただその容易でないことを話しただけでよしました。
けれどもその後、だんだんおしげと六蔵の様子を見ると、いかにも気の毒でたまりません。不具のうちにもこれほど哀れなものはないと思いました。唖《おし》、聾《つんぼ》、盲《めしい》などは不幸には相
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