少年の悲哀
國木田獨歩

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)少年《こども》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)月影|鮮《さ》やかなる

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)水のけじめ[#「けじめ」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)あり/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 少年《こども》の歡喜《よろこび》が詩であるならば、少年の悲哀《かなしみ》も亦《ま》た詩である。自然の心に宿る歡喜にして若《も》し歌ふべくんば、自然の心にさゝやく悲哀も亦《ま》た歌ふべきであらう。
 兎《と》も角《かく》、僕は僕の少年の時の悲哀の一ツを語つて見やうと思ふのである。(と一人の男が話しだした。)

     *     *     *

 僕は八歳《やつつ》の時から十五の時まで叔父の家《うち》で生育《そだつ》たので、其頃、僕の父母は東京に居られたのである。
 叔父の家は其土地の豪家で、山林田畑を澤山持つて、家に使ふ男女も常に七八人居たのである。
 僕は僕の少年の時代を田舍
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