のです。馬鹿馬鹿しい話だとお笑いもございましょうが、全くそうでしたので、まず私が村の色男になったのでございます。
そのころ私は女難の戒めをまるで忘れたのではありませんが、何を申すにも山里のことですから、若い者が二三人集まればすぐ娘の評判でございます。小学校の同僚もなんぞと言えばどこの娘《こ》は別嬪《べっぴん》だとか、あの娘にはもう色があるとか、そんな噂《うわさ》をするのは平気で、全くそれが一ツの楽しみなのですから、私もいつかその風に染みまして村の娘にからかって見たい気も時々起したのでございます。さすが母の戒めがありますから、うかとは手も出しませんでしたが、決して心からその実、女を恐れていたのではなく、もしよい機会《おり》があったらきっと色の一ツぐらいできるはずになっていたのでございます。
ところで武の妹はお幸《こう》と申しまして若い者のうちで大評判な可愛い娘でございまして年はそのころ十七でした。私も始終顔を見知っていましたが言葉を交《か》わしたことはなかったのです。先方《むこう》では私が叔母の家の者であり、学校の先生ということで遇うたびに礼をして行き過ぎるのでございます、田舎の娘に
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