少し顔を赤らめて言いにくそうにしていましたが、
『まアここへ坐って下さりませ、私はちょっと出て来ますから』と言い捨てて行こうとしますから、
『なんだ、なんだ、私はいやだ、一人残るのは』と思わず言いますと、
『それでは坐って下さらんのか』と言ってこわい顔をして私を睨みました。私が帰るといえばすぐにでも蹶飛《けと》ばしそうな剣幕ですから私も仕方なしにそこに坐って黙っていますと、娘は泣いておるのです。嗚咽《むせ》びかえっているのです、それを見た武の顔はほんとうに例えようがありません、額に青筋を立てて歯を喰いしばるかと思うと、泣き出しそうな顔をして眼をまじまじさせます。何か言い出しそうにしては口のあたりを手の甲で摩《こす》るのでございます。
『一体どうしたのだ』と私も事の様子があんまり妙なので問いかけました。しますると武がどもりながらこういうのでございます。妹が是非あなたに遇わしてくれと言って聞かない、いろいろ言い聞かしたがどうしても承知しない、それだからあなたを欺《だま》して連れて来たのだ、どうか不憫《ふびん》な女だと思って可愛がってやってくれ、私から手を突いて頼むから、とまずこういう次第な
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