ている、しかしなんという乱暴な衣装《みなり》だろう、古ぼけた洋服、ねずみ色のカラー、くしを入れない乱髪《らんぱつ》! 一人は四十幾歳、てっぺんがはげている。比ぶればいくらか服装《なり》はまさっているが、似たり寄ったり、なぜ二人とも洋服を着ているか、むしろ安物でもよいから小ザッぱり[#「ザッぱり」に傍点]した和服のほうがよさそうに思われるけれども、あいにくと二人とも一度は洋行なるものをして、二人とも横文字が読めて、一方はボルテーヤとか、ルーソーとか、一方はラファエルとかなんとか、もし新聞記者ならマコーレーをお題目としたことのある連中であるから、無理もない。かく申す自分がカーライル! すみのほうににやりにやり笑いながら、グビついているゾラもあり。
綿貫《わたぬき》博士《はかせ》がそばで皮肉を言わないだけがまだしも、先生がいると問答がことさらにこみ入る。
「わかったとも、大わかりだ、」と楠公《なんこう》の社《やしろ》に建てられて、ポーツマウス一件のために神戸《こうべ》市中をひきずられたという何侯爵《なんのこうしゃく》の銅像を作った名誉の彫刻家が、子供のようにわめいた。
「イヤとてもわかるも
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