源おじ
国木田独歩

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)都《みやこ》より

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)半里|隔《へだ》てし

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》りて
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     上

 都《みやこ》より一人の年若き教師下りきたりて佐伯《さいき》の子弟に語学教うることほとんど一年、秋の中ごろ来たりて夏の中ごろ去りぬ。夏の初め、彼は城下に住むことを厭《いと》いて、半里|隔《へだ》てし、桂《かつら》と呼ぶ港の岸に移りつ、ここより校舎に通いたり。かくて海辺《かいへん》にとどまること一月《ひとつき》、一月の間に言葉かわすほどの人|識《し》りしは片手にて数うるにも足らず。その重《おも》なる一人は宿の主人《あるじ》なり。ある夕《ゆうべ》、雨降り風|起《た》ちて磯《いそ》打つ波音もやや荒きに、独《ひと》りを好みて言葉すくなき教師もさすがにもの淋《さび》しく、二階なる一室《ひとま》を下りて主人夫
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